『浦島さん』より/太宰治

言葉というものは、
生きている事の不安から、
芽ばえて来たものじゃないですかね。
腐った土から赤い毒きのこが生えて出るように、
生命の不安が言葉を醗酵させているのじゃないのですか。
よろこびの言葉もあるにはありますが、
それにさえなお、
いやらしい工夫がほどこされているじゃありませんか。
人間は、よろこびの中にさえ、
不安を感じているのでしょうかね。


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