とりあえず買え!

私はCDの「ジャケ買い」の天才なのである。試聴などせずとも、ジャケットを見ただけで、だいたいの内容は察しがつくし、極めて調子が良い時には、ジャケットから音さえ聴こえてくるのである。

ジャケ買いは、かっこいい/かっこ悪いではなく、美しい/美しくないでもなく、「何かありそうだ」という感覚こそが命で、その「何か」に引き込まれるように、流れに逆らわず手に取って、引き込まれるがまま、なされるがままの精神状態でもって、じっと見詰めていると、次第に音が聴こえてくる―というものなのである。

私は、恋愛においても、基本的にジャケ買いの男なのである。これは、俗に言う「ルックス重視」ということではない。「何かありそうだ」に始まって、「何か」を感じて、「何か」に強く惹かれるのである。

私は、断じて男前ではない。そんなことは重々承知している。だが、上に述べたジャケ買いの視点で見てもらえれば、かなりの確率で「何かありそうだ」と思ってもらえるはずなのである。しかしながら、今日もタワーレコードの試聴機の前には、数多くの女子がヘッドホンに手を添えて、入念に品定めをしてしている―というのが現実で、皆、『確証』がなければ、触手を伸ばそうとはしないのである。貧乏根性100、賭博魂0なのである。

私は、駆け引きが面倒くさいし、自分のことを一から説明するのも面倒くさいし、ヌメヌメと舐め回すように品定めをされるのも我慢ならないから、賭博魂の塊のような奇怪な女子が現れて、私のことを潔くジャケ買いしてくれる日が来るのを切に祈っているのである。

確証というものが、いつもいつも話の冒頭に来ると思ったら大間違いだ。後から来る確証だってあるだろう。とりあえず話を始めてみて、それから一つ一つ拾い集めていく確証だってあるだろう。


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