跳ねる幻覚

或る日、田んぼの真ん中に一羽のカラスが立っているのを見て、「あ、太宰治や。」と思った。

或る日、うちの親父が大きなキャベツを持っているのを見て、「あ、レノンや。」と思った。

或る日、私の姿を見て、道路脇の、覆いのある幅の狭い溝に逃げ込んだは良いが、さすがに狭すぎたのか、隠れているのは頭だけで、首から下は丸出しの猫がじっとしているのを見て、「あ、俺や。」と思った。


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