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小説・木元麦乃助の憂鬱〈承〉

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「ロック?あはは、何を言い出すかと思ったらロックってあのゴミみたいな音楽のこと?あのゴミみたいな奴らが愛してやまないゴミ的姿勢のこと?」女刑事は言い、半笑いで麦乃助を睨み付けていた。麦乃助はうっとりとした表情を浮かべてミックジャガーの唇の艶を思い描いていた。

「で」女刑事が口火を切ろうとした時、麦乃助の携帯が鳴った。女刑事は心中イラッときたが、ここで怒鳴り散らすのは社会人としていかがなものか、周り近所、友人知人に悪い印象を抱かれては困ると思い、表情一変、震える笑顔でただ一言「どうぞ、ウフ」と言った。

麦乃助は電話に出た。海外からの電話。英国のズボリア・ギッシーニという男からの電話だった。ズボギシは麦乃助に言った「いきなりスマン。いやね、日本にファッキングレートなロック馬鹿がいるって噂を小耳にはさんでさ。で、こうやって連絡をば差し上げた次第でござる。え?なんで日本語喋れてんのかって?それがついさっき、22世紀から来たとかいう気色の悪いキチガイファッキン猫型ロボットに出くわしてさ、ちょっと脅してやったら賞味期限の切れ倒した雪見大福みてぇな汚ねぇポケットの中から何だかわけのわからねぇ道具出してきやがってさ。何ちゃら蒟蒻とかいうやつらしいんだけど。そいつを食ったらほら、喋れるようになったわけ、日本語。で、あのね、ズバリ言うけどこっち来ねえ?俺、『ガポン』ってバンドやってんだけど最近ギタリストの兄貴が抜けちゃってさあ。なあ、一緒にやんない?『ガポン』でギター弾いてみない?」

携帯を持つ手を震わせて、麦乃助は堰を切ったように泣き出した。それを見た女刑事は最初少し動揺して動揺を隠そうと苦心したが、気付けば「アモーレ東尾!!」と叫びながらもらい泣き崩れていて、そんな二人に触発された中華のオッサンは踊りながら胡椒を自らの頭に振りかけつつ「ポロポロポロポロポロポロポロポロ、途中からロポになってるねっ!」と両の眼を充血させて怒鳴り散らしていた。

麦乃助は悔しさで胸が張り裂けそうになっていた。というのも電話の声の主、ズボリア・ギッシーニなる人物こそは他でもない、麦乃助にとって人生の師。いや、神とも呼べる憧れの人、ロックスターだったから。麦乃助は囁くように答えた「何かと忙しくて..今は今でものすごく面倒臭いことになってるし..無意味なことで身動きがとれなくて..無理です..」

ズボギシは「そっか、残念。じゃとりあえず他を当たるわ。って言うかお前、頑張れよ。アデュー!」とだけ言って電話を切った。

涙が止まらない麦乃助の中に、言うに言えぬ怒り的なものが非科学的に膨張に次ぐ膨張を繰り返していた。

〈続く〉

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プロフィール

いっけい

ビートルズ好きの両親の元、ビートルズを子守唄に育ち物心が付く前から音楽に慣れ親しむ。
学生時代からいくつかのバンドを結成し関西を中心にライブに明け暮れる。
現在はソロでの音楽活動に加えイラストも手掛けるマルチアーティストとして活動の幅を広げている。

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