俺は痩せても枯れても「音楽の人」である。従って、その辺の人よりは音に敏感で、ゆえに人の口調、その抑揚に対してもその辺の人よりは敏感である。
以前にもここで述べたように、俺は『わかば』という煙草を吸っていて、時に『わかば』な気分でなければ『エコー』というのを吸ってはいるが、基本的にはやはり俺は俗に言う「ワカバー」である。
タール19mg、ニコチン1.4mg。最強にして最恐。銘柄こそ『わかば』だが、その内容たるや若葉を踏みにじる勢いで殺人的であるからして、吸っているとたまにめちゃくちゃ気分が悪くなる。
今回はその『わかば』を購入する際の話。『わかば』だって煙草は煙草。頬に傷のある見るからに暴力的な人と路地裏で人目を忍んで落ち合っては取引をして手に入れるというようなスリリングなことをしなくても、その辺のタバコ屋やコンビニで普通に売っている。しかしながら、そうやって普通に売っているにも関わらず「わかばください」と言うと、微妙に店員の対応、イントネーションがおかしいことに最近気付いたのである。10中8、9「わ、わかばぁ!?」みたいな感じに言われる。そして「は、はい、わかばですね。えーっと、えーっとぉ」などとやや焦り気味にカウンター下を探られたりする。別に俺はヤク的なものを買いに来たわけじゃないし、だいたいそんなにあからさまに焦った対応をされると、周りの視線が気になる。強盗かなんかだと思われて通報されて、翌日の朝刊の片隅に「わかばで逮捕」なんて間抜けな見出しの横に顔写真が載るようなことになったら困る。生活に困る。
世に数多くいる愛煙家の中で、なぜ我々ワカバーだけがこのような目に遭わなきゃならんのか...真面目に考えてみた。そして、『わかば』という名称に問題があるんじゃないか?という結論に達した。このキツさ、この味、この価格、このご時世で『わかば』はないだろう。逆に言えば名称さえ変えれば、なにせ不景気な世の中なんだから、一箱190円のこの煙草はもう少し市民権を得られるはずだ。例えば、緑色のパッケージはそのままに『紅』とか、紅の後に一字添えて『紅鮭』とか、いっそのこと英語名に変えて『バイオレンス・ランジェリー』とか、煙草を抜いて販売して『箱』とか、なんだかよくわからんが『機関車』とか。JTにやる気さえあればなんとかなりそうなものなのだが。
なんともならんか..。だって俺、本当はホープライトが吸いたいんだもの。
貧しき煙
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