捨てたり売ったりして、自分の持ち物が無くなっていくというのは心地の良いことだ。
何かしら「持つ」と、維持する為に金がかかるし、神経も使う。それはなにも家や車やバイクといった大きな物に限った話じゃない。「持つ」という行為には必ず、それを「維持する」という労が付いてくる。
人間、特に男は、本当は、それこそ寅さんみたいにバッグ一つでどこへでも行けるってくらい身軽なのが一番良いんだと思う。山田洋二に言わせれば、はなっからそんなこんなを含めての「男はつらいよ」というテーマ、タイトルなのかも知れない。物を「持つ」、彼女を「持つ」、家庭を「持つ」、定職を「持つ」ということに対して寅さんの姿があって、でもそれは理想論でしかなくて、理想論だから映画として表現するしかなくて、ゆえに「男はつらいよ」なのだろう。
「持つ」たびに、その場所に縛られていく気がする。それで良い人はそれで良い。でも俺は嫌だ。
唯一執着しても良いのは「自分」だけだと思う。自分を「持つ」ということだけだと思う。
渥美信仰
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