「あら、一憩ちゃん、いらっしゃい。さ、さ、そこの席空いてるから座って。一憩ちゃんはアレよね。サッポロビールで良かったわよね」
「あ、はい。お願いします」
―中略―
「ところで女将さん」
「なに?」
「みんなよく「人は一人では生きていけない」みたいなことを言いますよね」
「そうね。それもかなり安易に言うわね」
「でも間違いなく事実ですよね。事実は事実ですよね」
「そうね」
「でも何故か僕はその言葉が腑に落ちないんですよ、昔から。間違いなく事実なのをわかっていながら、納得がいかないというかなんというか...」
「そっか。じゃあ、なぜ腑に落ちないのかを人生の先輩たる私がこっそり教えてあげましょうか」
「お、お願いします!」
「それはね、一憩ちゃんが「人は一人では生きていけない」っていう言葉から「人生は他人に「生きて良し!」みたいに認めてもらわなきゃいけない」みたいな響きを感じ取ってるからよ」
「なるほど」
「確かに人は一人では生きていけないわよ。それは事実。でもね、人が、例えば一憩ちゃんが、生きるということに関して誰かの承認を得なきゃいけないなんてのは完全な出鱈目。事実でも何でもないのよ。だからそんな考え方は一刻も早く「冗談じゃない!」とかなんとか叫んで、頭から追い出さなきゃ。ね?」
「さすがは女将!伊達に歳とってない!」
「余計なお世話よ」
「女将のご教授のお陰で俄然テンションが上がってきました。ビールを瓶でもう一杯と鳥皮をタレで3本いただけますか?」
「さっきの言葉を撤回してくれたら出してあげる(笑)」
居酒屋「越乃歓梅」の女将
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音楽も絵も幅がある、物造り芸術は自分自身を成長させるのかな?
思いを形にするのは、誰もが手に入れる事ではないと思う。
続け事が、考え悩み葛藤しながら表現される事なら。
それ自体が才能だと思う。
アナタは才能が有ると思う。