インドや中国の建築様式をミックスした無闇にきらびやかで広大な料亭。「ジョンローンぐらいしか来んやろ。こんなとこ」と心ひそかに思っている俺の目の前に絶え間なく運ばれてくる宮廷料理らしき料理。何からどうやって食やいいんだかさっぱりわからない。そんな得体の知れない料理が所狭しと並ぶ巨大な円卓のぐるりには、俺以外にも奇妙な格好をした人間が数名いるが、俺はこの人たちのことを全く知らない。誰一人知らない。って言うか、できれば素性を知らずに済ませたい気色の悪い面々。俺はなぜ自分がここにいるのかさっぱりわからない。状況が全く飲み込めないので、代わりに「酒池肉林」と躊躇なくプリントされたラベルが貼ってあるただ甘いだけの、しかしながらアルコール度と価格だけは高そうな酒をらっぱ飲み、ガブガブ呑んでいると、あっという間に酒がまわって、店を彩る装飾品の赤色や金色に目が回り始める。と、そこへ突然銅鑼の爆音が一発鳴り響いて、宮廷音楽ってたぶんこんな感じなんだろうなという感じの妖艶な音楽が演奏している人間がどこにいるんだかさっぱりわからない状態で流れ始めて、円卓を囲む面々が待ってましたとばかりに奇声をあげて拍手をしだした。「な、な、何が始まるんや?」と思っていると、円卓から5メートルくらい離れた所に2つの小さな滝に挟まれたやはり赤色と金色を基調にした大きな舞台があり、そこへ、複数の踊り子が現れて踊り始めた。目が回る。「酒池肉林」でふにゃふにゃになっている俺の頭の中では、赤色と金色と宮廷音楽の音色と同席の気色の悪い面々の奇声と拍手が一つの巨大な渦と化して竜の如くに意思を持ち、暴れまわり始めている。と、その時!舞台の上、踊り子の一人と目が合って、一瞬で恋に落ちてしまった。
その踊り子。
エキゾチック ロマンス
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