大阪在住のうたうたい&絵描き&詩人 和田一憩(わだいっけい)のブログです。最新情報も随時配信していますので要チェック!!です。 携帯サイトはコチラ

日常の天使

絶望的な出来事があった日の夜。耐え難く人恋しくて、居ても立ってもいられなくて、とりあえず家を出て、用もないのに近所のコンビニへ出掛けた。

到着。店内に入ると店員に来客を告げる間抜けな音が鳴り響き、女性店員がどこからともなく実に快活な声で「いらっしゃいませ!」と言った。

店内を見渡すと永遠に出世しそうにない、見るからにみすぼらしい男性客が二人だけいて、自分の中で余計に虚しさが増すのを感じた。

道路に面した窓際の通路では、500円以下で購入しておきながら500円以下の品物には酷としか言いようのない使用頻度の高さゆえにかくもボロボロになってしまったんだろうと推測される哀れなリュックサックを背負った20代半ばらしき野郎が熱心にエロ本を立ち読みしており、そこから首を右に半転させ、視線を弁当の並んでいるコーナーに移すとそこにはもう一人の客、40代前半くらいのニッカポッカを履いた野郎が左手にやはりエロ本の入った青いカゴをぶら下げて、助六弁当を買うか、ちょっと奮発して牛カルビ弁当を買うかを交互に繰り返し手に取りながら、あからさまに悩んでいた。

虚無的空間。

俺は呆然と、雑誌が並んでいる窓際をリュックサックをチラ見しながら突き当たりまで歩き、突き当たりを右折、ジュース類が並んでいるコーナーを数歩通過してから「酒類」と書かれた札がぶら下がっている所で立ち止まり、特に呑みたいわけではないが自らの習慣、習性には逆らえずビールを2本手に取ると、さらに数歩直進して酒の肴などが並んでいる突き当たりを右折、弁当コーナーとパンコーナーに挟まれた通路をニッカポッカの後ろを通ってレジへと向かった。

レジに先程の快活な声の主たる女性店員の姿はなく、俺はレジ奥の煙草が並んでいる棚に「わかば」があるのを確認してから、女性店員が潜んでいるであろうレジ内左手奥の控え室らしき部屋に向かって小さな声で「すいませ〜ん」と言ったが、返事がないのでもう一度、今度はもう少し大きな声で「すいませ〜ん!」と言うと、店の外、入口周辺で掃き掃除をしていたらしき女性店員が各種掃除道具で両手塞がりなため、背中でドアを押し開けながら「あ、お客さん、すいません!」と言って店内に入ってきてそそくさとレジの方へ向かい、俺がレジ横に置いた2本のビールを手に取り、バーコードをピッピし始めた。

この時、俺はポケットの中からジャリ銭を取り出すのに苦心しており、やっとの思いで取り出すと今度はジャリ銭の数を数え、心の中で「よし、ギリギリ買える」と呟くと、うつ向いたまま「あ、あと35番の煙草をひとつください」と言った。

女性店員は「35番ですね」と言って数秒後、バーコードをピッとやって「はい、合計で584円になります」と言った。俺は600円を払い、女性店員から釣り銭16円と商品の入ったビニール袋を受け取ると、軽く魔が差したかのような、実に幼稚なイタズラ心が芽生えて、女性店員が「ありがとうございました」と言う前に「ありがとう」を言ってこましてやろうと、この時初めて顎をあげて「ありがとう」と言おうと思ったら、目の前に立っている女性店員がめちゃくちゃ綺麗な人で、後光らしきものさえ見えた気がして、一瞬意識がとんで、「ありが...」とまで言って完全にフリーズしてしまい、「とう」が言えなかったので、女性店員は俺の「ありが」のあとに言葉を付け足す形で「とうございました」と言ってニコッと笑った。

店を出ると、一度だけさりげなく振り返って、ビニール袋からビールを1本取りだしてから、軽快な足取りで家路についた。





という空想から生まれた絵。

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プロフィール

いっけい

ビートルズ好きの両親の元、ビートルズを子守唄に育ち物心が付く前から音楽に慣れ親しむ。
学生時代からいくつかのバンドを結成し関西を中心にライブに明け暮れる。
現在はソロでの音楽活動に加えイラストも手掛けるマルチアーティストとして活動の幅を広げている。

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