昔から「自立」という言葉をよく耳にする。「お前らは蝉か!」と言いたくなるくらい人は自立自立自立自立と言っていて、今は夏で蝉がそこら中で鳴いているが、たまに本当に自立自立自立自立と聞こえる。
俺は今までずっと、人の言う「自立」なるものに疑問を抱いてきた。本当の意味をわかって言ってるんだろうかコイツらは。という疑問がずっとあったのだが、心理学の本を何冊も読んでいく中で本当の意味を知って、やっぱりあの人たちは嘘を言ってたんだな、和製英語を本物の英語だと勘違いして喋っているくらい間抜けなことだったんだなという結論に達した。
心理学の本の「自立」の項を開くと、その冒頭には必ずと言って良いほど共通して「現代人は自立の意味を取り違えている」とある。そして、「自立と孤立は違う」という言葉が続いて「現代人の多くは親、兄弟など周りとの関係を遮断、もしくは断絶することを自立だと思っているが、それは自立ではなく孤立で、この誤った解釈が現代人特有の孤独感を生み、この孤独感が今日の様々な犯罪を生み出すに至っている」とある。
じゃ、「自立」の本当の意味は何なのかというと、これに関しては心理学の世界には『二人で一人』というフレーズが昔から基本概念としてあって、『二人で一人』というのは要するに「依存なくして自立なし」ということなのだそうだ。
心理学で言う「依存」という言葉には、「帰依」という言葉があることからもわかるように「帰る場所」という意味合いもあって、帰る場所があって初めて「自立」で、帰る場所のない「自立」は「自立」ではなく「孤立」だということだ。
世の中には自立自立と声高に言いながら、親や兄弟との関係がガタガタになってしまっている人がいる。そして、そんな人に限ってまるで自分自身を正当化するかのようにまたぞろ「自立」ということばを繰り返し繰り返し誇らしげに口走っている。それはただの悪循環じゃないのか?俺としても「自立できている=大人」という考え方に異論はない。その通りだと思う。思うが、親や兄弟と良い関係を築けない人間が大人だと言えるのかどうか大いに疑問だし、親や兄弟とさえ良い関係を築けない人間が果たして親や兄弟以外の人たちと良い関係を築けるのかということも大いに疑問だ。
今までずっと、この「自立」という言葉を、本当の意味も知らぬまま蝉の如くに繰り返し繰り返し説教調に言う人たちに囲まれて、言うに言えぬ怒りにも似た疑問や違和感を抱き続けてきた人たちに捧ぐ。
孤立する蝉
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