近所の関西スーパーに、この絵のモデルとなった女性が働いている。
小柄なその人は笑顔を絶やさず、時にレジを打っていたり、時にカートを所定の位置に戻したり、と、実にイキイキと仕事に励んでいて、俺はほぼ毎日、関西スーパーに通ってその姿を見かけては、めちゃくちゃ恥ずかしい言葉だけど「生きる希望」みたいなものを分けてもらっていた。だから、いつか絵に現れてくれることを祈っていた。
待つしかない。でも、ただ待っていてもなかなか現れてくれるものではない。だから、ほぼ毎日通って、その姿を目に、心に焼き付けていた。といって、もちろん、ジロジロ見つめるわけじゃないし、ましてや「あの〜、僕の絵のモデルになっていただけないでしょうか?」なんてことを言い出すきっかけを探っていたわけでもない。いつも、ほんの一瞬チラ見するだけ。「あ、居てはるな」程度のチラ見の積み重ね。たまに後ろ姿だけチラっと見ただけで帰ることもあった。要は、自分の中に印象を焼き付けて、いつか絵に出てきてくれることを祈っている自分を自覚し続けさえすれば良いんだから、ジロジロ見つめる必要なんてないというのが俺の考えだった。
実は過去にも一度、彼女は絵の中に登場している。『エキゾチック・ロマンス』がそうだ。でも、あの絵にしてもこの絵にしても、俺は別に彼女を描こうと思って描き始めたわけじゃない。いつものようにただ「出てきた」。そして、厳密に言うとあの絵の彼女もこの絵の彼女も実際の彼女とはどこかが違う。それはあの絵の女性とこの絵の女性が全く似ていないということが証明してる。
前作も今作もまだまだ雰囲気止まりだ。雰囲気が出ているというだけだ。次に出てきた時は、もう少し実像に迫ったものになるだろうと思う。それまではこの2枚が俺の心の灯火だ。
明日はポッキーでも買いに行こうかな。
心の灯火
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