俺がピッチャーをやる時は相手がキャッチャー。相手がピッチャーをやる時は俺がキャッチャー。
この繰り返しが『会話』
ピッチャーの能力を最大限引き出しながら自分の持ち味を発揮するのがキャッチャーで、キャッチャーの要求に最大限応えながら自分の持ち味を発揮するのがピッチャー。
これが『会話』の妙
俺はキャッチャーとしてはなかなかのもの。ピッチャーの能力を最大限引き出してやろうとするし、たまにピッチャーが俺のサインに対して首を振った場合には「ほなそれでこい!」サインを出す。自信を持って投げる球なんだから打たれてもしょうがねえじゃねえか。で、あ、打たれた。でも、ま、そうヘコみなさんな。試合が終わったら飲みに行こや。ってなもんだ。
一方、ピッチャーとしての俺は、キャッチャーの質に大きく左右される。キャッチャーが良ければ俺はなかなかの球を投げる。内角低めにビシッといく。でもキャッチャーが悪かったら、身体が全く言うことを聞かず、暴投に次ぐ暴投、あるいはデッドボール。しまいには投げるのが嫌になってしまい、マウンド上にあぐらをかいてビールを飲み始めたりしてしまう始末。そんな俺を見かねたキャッチャーは俺の所までやってきて「代われ!」と一喝。俺は邪険な態度で渡された汚いキャッチャーミットを嫌々受け取ってトボトボとホームベースの所まで歩いて行き、しゃがみ込んでサインを出すが、先程までキャッチャーだったピッチャーは俺のサインなど見向きもせず、傍若無人、好き勝手に球を投げ込んでくる。どこに投げてくるのかわからない中で俺が補逸すると、ピッチャーは怒り狂ってグローブをマウンド上に叩き付けて俺の所にやってきて無言で俺を睨み付ける。俺は謝る。「全て俺のせいです。ごめんなさい」謝る。腹の中では「このクソ野郎が」と思っているが、自分の意思に反して口から出てくる言葉は「ごめんなさい」のみ。涙が込み上げてくる。
元々キャッチャーなんて退屈だと思っていたあいつは、ここぞとばかり、負け犬のような目をした俺を固定キャッチャーにした。「あいつは絶対俺には逆らわへんし」との算段下、来る日も来る日も傍若無人な投球に見舞われた。
仕事は仕事。今日も俺は負け犬キャッチャー。デカく重いボストンバックを担いでグラウンドに向かうと、あいつは先に来ていて、河川敷の上に俺を見つけるやいなや大きな声で「おせえよお前。やる気ないんやったら死ねや」と言い、周りの奴らが卑屈な顔をして笑っていた。
バックの中に大量のビール。
会話について
トラックバック(0)
トラックバックURL: https://ikkei.me/mt/mt-tb.cgi/656
優しさを受けだけの人、贈り物を貰うだけの人。
最近は貰うだけの人。多いだろう。
そして、疲れた相手に暴力。
あなたにも、見過ごさずに闘いが必要だった事が、わかります。
優しさは、時に暴力を生み出してしまう。
相手にも自分にも、自分を偽り優しさを、与えると見返りが欲しいからだ。