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一憩、太宰さんを語る

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太宰治=『人間失格』っていうイメージがある。「暗い」とか「重い」とか「絶望的」とかってイメージがある。俺もちょっと前までそう思っていた。





俺が太宰さんの著書を読むようになったきっかけは、ある朝、目を覚ますと同時に、頭に『人間失格/太宰治』というフレーズがドン!と、強烈なインパクトをもって浮かんだということだった(誰も信じてくれないだろうけど、これは本当の本当に実話)。で、俺はガバッと布団から出て、上着だけ羽織ると、そのまま近所の古本屋に直行して、「太宰、太宰...」と心の中で呟きながら、その古本屋の「た」の段を探すと、あからさまに「ここ!俺ここ!ここにおりま〜す!」といった感じで、ショッキングピンクのカバーに黒い字で「人間失格/太宰治」とだけ書かれた本が俺の目に、右斜めの角度から一直線に飛び込んできたのである。

俺が『人間失格』という作品に、太宰治という人に、期待したのは暗さでも重さでも絶望感でもなく、本物のユーモアだった。

で、読み始めたら、最初の1ページで自分の期待したものがそこにあることが知れて、その日のうちにダァーッと読み、読み終えた。

読み終えた時は脱力感みたいなものでいっぱいになった。でも、その脱力感はちっとも不快なものじゃなくて、その真逆の感慨、「嬉しいなあ...」という気持ちから来る脱力感だった。

その後はもう、連日、古本屋に通い、『晩年』、『回想・太宰治』(太宰さんと特に親しくしていた人の回想録)、『斜陽』、『新ハムレット』、『新樹の言葉』、『きりぎりす』の順で手に入れ、読み耽っている。

中でも特殊な一冊、『回想・太宰治』は、太宰さんが実際はどんな人だったのかを知るのにとても役立った。やはり、俺の勘通り、無類の酒好きで、それも大概、昼間から呑んでいて、「太宰先生と会って話をしてみたい」という文学青年たちの来訪は喜んで承けて拒まず、いつもおちゃらけていて、陽気で、場の空気に敏感で、でも、そうやっておちゃらけたり、陽気でいるためには酒が欠かせなくて、酒が抜けると親しい人ともまともに目を合わせられない...そんな人だったみたいで、そんな太宰さんは、人間の「ハニカミ」というのをこよなく愛したらしい。

あと、あと、太宰さんは、めちゃくちゃな人生ながら、めちゃくちゃな男前で、影のある色気があって、めちゃくちゃ女性にモテたらしく、その「モテる」ということが面倒臭くて面倒臭くて...みたいなことを真顔で周りに言うような人だったらしい。添付した写真を見てください。わかるでしょ?

太宰さんは2度、自殺に失敗している。そして、3度目のそれで亡くなっている。太宰さん自身はそんな生き方だったし、そんな生き方しかできなかったんだろうけど、太宰さんが残した作品が読み手に訴えかけてくるのは、昔も今も、『人間失格』を含めて、決して、絶望的で退廃的な死の美学なんかじゃないと思う。「死のススメ」なんかじゃ絶対ないと思う。その証拠に、「俺は俺。君たちは君たち。絶対に死んじゃ駄目だよ!」って声がちゃんと聞こえてくる。

ちなみに、昨日知ったんだけど、今年は太宰さんの生誕100周年らしい。ひょっとしたら俺、呼ばれたのかな。「おい、ちょっとそこの青年、俺の100周年を祝ってくんねえか?」って。





〈追記〉今のところ、俺が最もオススメする太宰作品は、処女作品集『晩年』の中の「猿面冠者」です。背筋に戦慄が走ったよ、ホンマに。

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プロフィール

いっけい

ビートルズ好きの両親の元、ビートルズを子守唄に育ち物心が付く前から音楽に慣れ親しむ。
学生時代からいくつかのバンドを結成し関西を中心にライブに明け暮れる。
現在はソロでの音楽活動に加えイラストも手掛けるマルチアーティストとして活動の幅を広げている。

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