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吃音からの贈り物

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昨日、ここに載せた『軸に凭れて』の中で、俺は自分が子供の頃、吃りが酷かったということと、それが実は今でも全然治ってなくて、「ただ誤魔化すのが上手くなっただけの話」と書いたが、じゃ「吃りを誤魔化す」って一体どういうことなのか。今ここで、皆さんに説明してみたいと思います。

これが実は、かなりの熟練と日々の努力みたいなものを要する、難易度の高い、立派に『技術』と呼べるかもしれないものだったりするのです。





吃りが酷くて、友人たちに随分と笑われたりもしていた子供の頃の俺の喋り方というのは、実に単純に、「頭に浮かんだ文章をそのまま喋る」というものでした。頭に浮かんだ文章を口にする直前で、素早く「チェックを入れる」ということができなかったのです。無謀でした。それが長い歳月を経て、日々の地味で地道な試行錯誤の結果、俺はついに、他人に自分が吃りであることを悟られないくらいに、吃りを誤魔化せるようになったのです。

「吃りを誤魔化す」とは、つまりこういうことです。人と喋っていて、頭に文章が浮かぶ。と、浮かんだ瞬間に一度、その浮かんだ文章の一番最初に来る言葉の、一番最初の音にチェックを入れるわけです(例えばそれが「眼鏡」だとしたら、一番最初に来るのは「メ」で、母音的には「エ」となりますね)。その音が出るのか出ないのかを瞬時にして見極めるわけです。そして、「出ない」と判断すると、今度はすぐに、その言いたいが言えない言葉と同じ意味で、音の違う言葉を頭の中で高速で検索するわけです。で、もしそのような言葉が頭の中に見つかれば、その言葉を出ない言葉に代えて使うし、なければ、その出ない言葉を度忘れしたフリをして、会話をしている相手がすぐにそれだとわかるヒントを出して、相手が「〇〇?」と答えるのを待って、俺自身はその〇〇を口にすることなく、「そう!それがね」というフレーズを文章の頭に持ってきて、それに伴って文章全体に軽く修正を加えてから、口にするわけです。





どうです?おわかり戴けましたか?なかなかの技術でしょ?何の自慢にもならないけど、俺はこれを小学生の頃から現在に至るまで、1日も欠かすことなく、ず〜っとやってきたわけです。なかなかのもんでしょ?

吃りであるということで、今までそこそこ辛い目をしてきたというのは確かです。子供の頃には、たけし軍団に入って芸人になるんだという夢を諦めざるを得なかったし、今は今で、言葉を口にする直前で毎回チェックを入れなければならない分、会話中、自分の思う絶妙なタイミングからはどうしても少し遅れてしまうし、言葉のチョイス的にも、言うなれば妥協に次ぐ妥協で、「タイミングのズレと、言葉の妥協さえせんで済んだら俺、もっとオモロイのになあ」なんてことを思うのは日常茶飯事です。でもその反面、今ではこの吃りに感謝している部分も大いにあります。ほとんど本というものを読まずにきた割りには、言葉のボキャブラリーが多かったり(少しでも上手く誤魔化す為に、無意識の内に、言葉を覚えるということにかなり貪欲になったようです)、同じ言葉でも、喋ったら吃るのにメロディに乗せて歌う分には全く吃らないということに気付いた時の感動が、後に俺が本気で音楽をやるようになったきっかけになったりと、今思えばこの吃り、吃音、コンプレックスから得たものは計り知れないものがあると思っています。

犠牲にするものも確かに少なからずあったけど、でも、その犠牲が生んだ収穫はもっともっと大きかったと思っています。

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プロフィール

いっけい

ビートルズ好きの両親の元、ビートルズを子守唄に育ち物心が付く前から音楽に慣れ親しむ。
学生時代からいくつかのバンドを結成し関西を中心にライブに明け暮れる。
現在はソロでの音楽活動に加えイラストも手掛けるマルチアーティストとして活動の幅を広げている。

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