大阪在住のうたうたい&絵描き&詩人 和田一憩(わだいっけい)のブログです。最新情報も随時配信していますので要チェック!!です。 携帯サイトはコチラ

対話厨房

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人がうちに遊びにきたとして、冷蔵庫の中を見られることくらい恥ずかしいものはないでしょ?トイレは恥ずかしくないのに、冷蔵庫は恥ずかしい。本当は、トイレを見られることの方が恥ずかしいことのはずなのに、実際は、冷蔵庫の中を見られることの方がずっと恥ずかしい。だから、逆に、人の家に招かれた時にも、冷蔵庫の中が見えそうになったら、それは見てはいけないもの、サッと視線を逸らす。

今から書く文章は、俺が、俺だからゆえに体験し続けた、「会話」というものについての話。





俺は、自分で言うのも何だけど、料理人としてはなかなかの腕前だという自負があった。で、厨房に立ち、腕捲りをして、「よし!」と自らに一喝すると、クルリ体を反転、ちょうど自分の真後ろにある冷蔵庫のドアの取手に手を掛けて、恐る恐る開ける。が、何も、本当に何も入ってなくて、呆然として、立ち尽くした。

そこへ、ある料理人がやってきて、「チッ!」と舌打ち、俺を厨房の隅へドンと押し退けて、厨房を占拠した。そして、やはり腕捲りをしてから、先程の冷蔵庫を勢いよく開ける。と、そこには、あれぇっ!?膨大な量の食材が溢れんばかりに詰まっていて、料理人はどや顔を浮かべつつ食材を選び、テキパキと調理し始めた。

俺は黙ってエプロンを脱ぎ、腕捲りを解き、背中を丸めてトボトボ歩き、食卓についた。

どや顔料理人が自信満々に次から次へと料理を運んできた。俺は、自分が何も拵えられなかった羞恥心から、出されるものを、出された順に、出されるがままに食べた。





いつもいつも不味かったが、いつもいつも「旨い」と言った。

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プロフィール

いっけい

ビートルズ好きの両親の元、ビートルズを子守唄に育ち物心が付く前から音楽に慣れ親しむ。
学生時代からいくつかのバンドを結成し関西を中心にライブに明け暮れる。
現在はソロでの音楽活動に加えイラストも手掛けるマルチアーティストとして活動の幅を広げている。

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