大阪在住のうたうたい&絵描き&詩人 和田一憩(わだいっけい)のブログです。最新情報も随時配信していますので要チェック!!です。 携帯サイトはコチラ

「何も聞こえない。だからもう俺は何も喋らない。俺は...俺はとっても疲れた。って、あは、無の世界みたいな崇高な場所でものすごい知的なことを思ってる時に「とっても」ってフレーズはとっても滑稽に響くね。浮くね。とっても可笑しいね」などとあちら側で思って、心密かに恍惚の表情を浮かべていた麦乃助の今やただの飾りでしかないはずの耳に突如中華のオッサンの屁の音が飛び込んできた。その刹那、「じゃあかあっしゃあ!!」麦乃助は中華のオッサンのところへ走っていって眉間のちょっと下あたりをグーでドーンとやった。中華のオッサンは「グーでドーン!」と叫びながら後方へ吹っ飛んだ。それから麦乃助は首が取れそうな勢いで振り返ると、オッサンが拵えた大量の汚物的中華を「ランチの中のランチ!」と叫びながら片っ端から女刑事に投げつけた。そして声の限りに、ズボリア・ギッシーニの歌唱法に多大なる影響を受けたと某雑誌のインタビューで答えていた、ぺ・ログレスクの声で叫んだ。

俺はロックが大好きだ!

俺はロックが大好きだ!

俺はロックが大好きだ!

俺はロックが大好きだ!

俺はロックが大好きだ!

俺はロックが大好きだ!

俺はロックが大好きだ!

俺はロックが大好きだ!

俺はロックが大好きだ!

俺はロックが大好きだ!

そして最後に一言、「わかる?」と言った。

汚物で中華なランチにまみれた女刑事は口を歪ませて麦乃助を睨み付けると「あんたに味方はおらんよ..私にはおるけど」と呟いてから鼻で笑ってこう言った。

「一丁あがり!」

泣き止んだ女刑事が自分が何をしにここに来たのかを思い出すまでの束の間、冷たく澄んだ静寂が直立不動、後ろで手を組んだ姿勢の中華のオッサンの口から流れ出て部屋全体を満たしていた。

「で」何をしにここに来たのかを思い出した女刑事が沈黙を破り喋りだすと同時に、中華のオッサンは台所へ戻り再び汚物を量産し始めた。女刑事は続けた。「で、そうや、思い出した。お前やろ?やったのん。証拠はないけどこういうことは大概お前やねん。お前に決まってんねん。お前がやったって証拠もないのに決めつけてかかってんねん今、私。な?お前やろ?5年前、あの商店街の門の下にあるたこ焼き屋にスーパーボール横流ししてたんお前やろ?もうええ加減吐いたらどないや。なあ?オッサンよ」女刑事の同意を求める声と視線を背中で受け止めた中華のオッサンは自分の手元を見つめたまま「ホンマ、そいつそう見えて結構あれですわ」と答えた。麦乃助は左手に携帯を握りしめたまま、うつむき黙っていた。

中華のオッサンが汚物を量産している台所を除けば、部屋にはまだ先程の静寂の残り香が漂っていた。麦乃助はそれをありったけの想像力でかき集めて鼻クソのように丸めて固めると、自分の両耳に捩じ込んだ。

麦乃助は今、無の世界にいた。

〈続く〉

「ロック?あはは、何を言い出すかと思ったらロックってあのゴミみたいな音楽のこと?あのゴミみたいな奴らが愛してやまないゴミ的姿勢のこと?」女刑事は言い、半笑いで麦乃助を睨み付けていた。麦乃助はうっとりとした表情を浮かべてミックジャガーの唇の艶を思い描いていた。

「で」女刑事が口火を切ろうとした時、麦乃助の携帯が鳴った。女刑事は心中イラッときたが、ここで怒鳴り散らすのは社会人としていかがなものか、周り近所、友人知人に悪い印象を抱かれては困ると思い、表情一変、震える笑顔でただ一言「どうぞ、ウフ」と言った。

麦乃助は電話に出た。海外からの電話。英国のズボリア・ギッシーニという男からの電話だった。ズボギシは麦乃助に言った「いきなりスマン。いやね、日本にファッキングレートなロック馬鹿がいるって噂を小耳にはさんでさ。で、こうやって連絡をば差し上げた次第でござる。え?なんで日本語喋れてんのかって?それがついさっき、22世紀から来たとかいう気色の悪いキチガイファッキン猫型ロボットに出くわしてさ、ちょっと脅してやったら賞味期限の切れ倒した雪見大福みてぇな汚ねぇポケットの中から何だかわけのわからねぇ道具出してきやがってさ。何ちゃら蒟蒻とかいうやつらしいんだけど。そいつを食ったらほら、喋れるようになったわけ、日本語。で、あのね、ズバリ言うけどこっち来ねえ?俺、『ガポン』ってバンドやってんだけど最近ギタリストの兄貴が抜けちゃってさあ。なあ、一緒にやんない?『ガポン』でギター弾いてみない?」

携帯を持つ手を震わせて、麦乃助は堰を切ったように泣き出した。それを見た女刑事は最初少し動揺して動揺を隠そうと苦心したが、気付けば「アモーレ東尾!!」と叫びながらもらい泣き崩れていて、そんな二人に触発された中華のオッサンは踊りながら胡椒を自らの頭に振りかけつつ「ポロポロポロポロポロポロポロポロ、途中からロポになってるねっ!」と両の眼を充血させて怒鳴り散らしていた。

麦乃助は悔しさで胸が張り裂けそうになっていた。というのも電話の声の主、ズボリア・ギッシーニなる人物こそは他でもない、麦乃助にとって人生の師。いや、神とも呼べる憧れの人、ロックスターだったから。麦乃助は囁くように答えた「何かと忙しくて..今は今でものすごく面倒臭いことになってるし..無意味なことで身動きがとれなくて..無理です..」

ズボギシは「そっか、残念。じゃとりあえず他を当たるわ。って言うかお前、頑張れよ。アデュー!」とだけ言って電話を切った。

涙が止まらない麦乃助の中に、言うに言えぬ怒り的なものが非科学的に膨張に次ぐ膨張を繰り返していた。

〈続く〉

口が裂けても公にはできない仕事からクタクタになって帰宅した木元麦乃助は驚くべき光景を目にした。鍵を開け、家に入るとそこに刑事ドラマでよく見る取調室のような世界が広がっていたのである。

豆電球一つのみ灯る薄暗い部屋の中央に鬼のような形相をした女刑事が頬杖をつき、ものすごい勢いで貧乏ゆすりをしていて、その女刑事の目線の先には汚物のごときオッサンが火に油を注ぎつつ汚物のごとき中華料理を誰からも注文を受けていないであろうにも関わらず無闇やたらに「一丁あがり!一丁あがり!」などと喚き散らしながら量産していた。

「修羅場..」とだけ呟やいて麦乃助は急ぎ外に出よう、脱出しようと試みたが、鬼のような形相をした女刑事が視線を中華のオッサンに向けたまま微動だにせず「待て!待てやコラァ!コラーゲン。私はずっとあなたのことを待っていたのよ。待ち焦がれていたのよ。いつまで待たせるのよあなた...歯形!」と叫んだので麦乃助は立ち止まらざるを得なかった。

数分後、女刑事の言葉に麦乃助はただただ「んぺ?」としか言えなかった。女刑事は麦乃助を立ち止まらせると自信満々にこう言ったのだ。「お前やろ。いや、お前や。お前に決まってる。あの向かいの家の貧乏丸出しの汚いオバハンの汚いパンティ盗んだのんお前やろ!」と。

尋問が始まり、麦乃助は「知らないものは知らない。わからないものはわからない。だいたいちょっと考えりゃわかるだろう。この馬鹿野郎が」というフレーズ、信念を軸に、自分が無実であることを可能な限り言葉多めに繰り返し繰り返し説明したが、すればするほど女刑事は顔面紅潮(+)。納得せず、引き下がらず、怒を通り越した哀といった具合で、たまに涙を流しながら「...例えばあのオッサン。あの中華のオッサンの辛さを思えばお前、ここは自白やろ。自白しかないやろ」と、麦乃助に自白することを懇願してきたのである。

麦乃助はあまりに馬鹿馬鹿しくて辛くて一瞬、心が折れそうになった。しかしながら彼は不幸中の幸いにも、全くの無名とは言え誇り高きバンドマンであった。自分の中で渦巻いている全ての不愉快や不可解や不本意をギュッと凝縮して、ただ一言「俺はロックが大好きだ」とだけ答えた。

〈続く〉

毎日、同じ道を歩いて同じ場所に行き、同じ道を歩いて同じ場所に帰ってくる。

目と鼻の先の未来にさえ楽しみを見い出せず、気付けばまた、同じ道を歩いて同じ場所に行き、同じ場所に帰ってきてしまっている。

歩きたい道は別にあり、行きたい場所も別にあり、帰りたい場所も別にある。

左足が『現実』に根を張っていて、右足が『理想』に根を張っていて、現実と理想が離れれば離れるほど、俺はじゃんじゃんじゃんじゃん笑い的にはアリだが社会的には0点な格好になっていく。

そんな中で変わらず、そんな中だから余計に、俺の中で自由度を増して、膨張し続けて、今や爆発しかけているのが妄想や想像や空想や夢想や夜見る夢の世界だ。

もし今、自由な時間と、ペンと紙とギターがあれば、俺はものすごい名曲を書く自信がある。

のに。

パーソナルコンピューターをお持ちの方は、『YOU TUBE』で「アルファベッツ」を検索してみていただきたい。そして、この3ピースバンドのギターヴォーカルの奴が今どこで何をしているのかをご存知の方は是非ともご一報いただきたい。

まだ音楽活動を続けていて、その辺のライブハウスを性懲りもなく転戦して歩いているのかもしれないし、天六の関テレのふもとの公園でブルーシートに横たわって、中国人カップルが喧嘩している声を心中笑いながら聞いているのかもしれない。いずれにせよ、彼の「今」がとても気になるのです。

彼に言いたいことはないが彼に言われたいことが山ほどあるのです。

説教され飽きた。

「一度も病気になったことのない人間は友人にするに値しない」というのは昔から語り継がれている古人の言葉。そして、一大モンゴル帝国を築き上げたジンギスカンは、将軍の役職を決める際、「部下の気持ちがわからないから」という理由から、あえて屈強で勇敢な者は選ばなかったらしい。

巷には「強くならねば」的メッセージの歌が溢れかえっているが、強くなって一体どうしようというのか。皆がその弊害についてろくに考えようともせず、ただ周りに流されるように盲目的に強くなろう、強くなろうとする中で、弱い人間は一体誰に胸の内を明かせばいいのだろう。

弱い人間にはただただ話を聞いてほしい時というのがある。ただただ笑顔で頷いて欲しい時というのがある。そんな時に反論や説教は要らない。でも強い人間はとりあえず何か喋ろうとする。弱い人間に有難い言葉を恵んでやろうとする。酷い時には「しっかりせえ!」なんて怒鳴ったりもする。かくして、弱い人間は黙ることを覚える。吐きだすべきものを吐きだすべきタイミングで吐きだせない日々が続いて、本当にどうしようもないところまで追い込まれていく。死ぬほど辛い。

弱い人間が強い人間の顎に一発ぶちかます方法もあるにはある。が、ぶちかました後、うずくまった強い人間が目の当たりにするのは弱い人間の死体だ。

俺はあんたの言葉をちゃんと聞く。あんたが喋ってる最中に、聞いてるフリをして、同時進行で「でも俺はこう思う」的言葉を頭の中で組み立てるなんてことはしない。あんたが喋ってるんだから、あんたの時間。ちゃんと聞く。俺の意見なんて二の次。まずはあんたの話をよく聞いて、あんたが心から欲している言葉をよく見定めた上で、意見を求められたらちゃんと自分のフィルターを通して誠意をもって答える。





友達になって欲しい。

再びの来寺、心より感謝します。あんたがコメントを寄せてくれなかったら『書込寺炎上』なる文章を載せるつもりでした。





俺は「やっちゃってください」って答えると思う。いや「やっちゃってくだちゃい!」って答えると思う。その神様だかペテン師だかが現れた時にタイミング良く俺、酔ぉてたらね。でも、もしシラフの時にその怪しい奴らがそうやって怪しいことを吐かしてきたら、「生きます」って答えると思う。いや「生きまちゅ!」って答えると思う。

いずれにせよ、俺のナメた口調にご立腹して「...いや、お前に選択肢はない。やろ思たけどない。お前みたいなもんはぶち殺す!」ってなったらそれこそ俺の思うつぼ。一番望む形かなと思う。

ただ「でもお前、痛いで、苦しいでぇ〜」とか言われたら、スーツに着替えてネクタイを正して土下座して「生かさしてもらいまふ」って答えると思う。

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プロフィール

いっけい

ビートルズ好きの両親の元、ビートルズを子守唄に育ち物心が付く前から音楽に慣れ親しむ。
学生時代からいくつかのバンドを結成し関西を中心にライブに明け暮れる。
現在はソロでの音楽活動に加えイラストも手掛けるマルチアーティストとして活動の幅を広げている。

いっけいの楽曲が聴ける!! MySpaceはこちら

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